付録6. ウマ品種の系統
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Y染色体もかなり役に立つが、ミトコンドリアDNAに比べるとかなり制限がある ミトコンドリアDNAの分析
家畜ウマの起源となった地域はどこかを探り、そこからウマがどういうルートでヨーロッパや中国、エジプトへと拡散していったのかをたどることが可能になる
家畜ウマの分布域が拡大していく際、野生の雌ウマとの交雑が頻繁に行われていたこともこの分析から判明している
Y染色体の分析
分布域拡大期に野生の雄ウマの寄与はなかったこと
最初に家畜化された集団でも野生の雄ウマの寄与はきわめて限られていたこと
品種の分岐の過程をたどるには、ミトコンドリアDNAやY染色体ではなく、全ゲノムデータや、核ゲノムの各所に散在し進化速度の速い(突然変異率の高い)マイクロサテライトDNAを用いる必要がある そのような研究はまだかなり予備的な状態にある
他の家畜動物と同様に、系統樹を作成するにあたり、交雑が事態をかなりややこしくする
たとえばサラブレッドは複数の輓系種や騎乗種の作出に寄与している 系統樹の枝と枝との間で混合が生じている
それでもなお、品種のクラスターやさらには全体の系統樹において、枝がどこでどのように分岐したのかを示す目印がすっかり隠されているわけではない
現在のところは、最大限頑張って、品種をなんとかクラスターに分けることができる
最後のクラスターは、主として騎乗用で以前は軽馬車を引くのに用いられていた、いわゆる混血種を多く含むもの
どの品種も長らく隔離されてきた歴史をもつもの
ここで紹介した品種の系統樹はまだごく予備的なもの
地理的な条件が大きく影を落としているのは明らかだと思える
ということは、人間の歴史、特に征服や貿易がからむのも関係しているだろう
たとえば体の大きさや体型に現れる品種の機能的な特質はそれほど重要ではないようだ
異なる地域でも、比較的原種に近い在来種を基にしたり交雑を行ったりすることにより、同じように変化した形質が進化してきたから